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「 雨の幻影 」 プロローグ
2013.08.02 19:30
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    雨が降っていた。
    それが、最初の記憶だった。

    幼少期の恐らく一番古い記憶。三歳くらいではないかと思う。
    まだ陽が落ちる時刻でもないのか、ほんのりと薄暗い空。
    しとしとと、聞こえる雨音。
    その部屋は、薄く掠れたこの記憶の中でしか知らない。
    向こうには、さほど大きくもない庭が少しだけ見えていた。
    部屋の中に、母が居た。蹲り、声も出さずに嗚咽する後姿を見た。
    もう一人、誰かがそこに居た。いや、居た誰かが、去っていく。母よりも大きなその影。
    それが誰だったのか、思い出そうとしても、顔は分からない。
    泣き咽ぶ母が、幼い自分を抱きしめた。

    外は見えなくなった。それでも雨の匂いが消えない。
    暖かい腕に抱かれながら。
    母の肩越しに、低い棚に飾ってある遠い山の風景の写真を、
    ぼんやりと見ていた事を微かに覚えている。

    充彦は目を閉じた。





    ☆ 第一章 ☆




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