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「 Beloved 〜 凍てつく炎 〜 」 file #9
2015.11.03 20:00
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    9月5日(土) 朝 東京都M区


    最近、涼しい日が多いと思う。このまま、もう夏が終わるんだろうか。
    また台風が近付いて来てるみたいだから、気を付けないといけないな。

    さっき仕事から帰って来たら、テーブルに朝食が用意してあった。
    引っ越して来てから、ここでの姉さんとの暮らしもそれなりに落ち着いてきたと思う。
    俺は今日、勤務が明けて非番の日。だけど姉さんは土曜の出勤日で、またすれ違いだった。どうしても俺の仕事の時間が不規則だから、姉さんにもこういう生活に慣れて貰うしかなくて。申し訳無いと思うけど、こればっかりはどうしようも無いし。俺自身、やっぱりもどかしいと思う時はあるけど、それは最初から分かってた事だ。
    でも一緒に暮らしてる分、前より姉さんの近くに居れるから、安心はしてる。
    この朝食も、俺が勤務明けの日は、姉さんが自分の出勤前に、いつも作っておいてくれるんだ。俺が帰って来たら、暖めてすぐに食べれるように。二人で暮らし始めてから、初めてそうしてくれた時は、感激して思わず胸がいっぱいになってしまったよ。いつも、本当に感謝してる。今日も美味しくいただきました。
    休みが一緒の日は、できれば二人でゆっくり過ごしたいと思う。何も起こらない事を祈ろう。



    お腹はいっぱいになったし、今日はこれから何をしようか。
    仮眠は取りたいけど、やらないといけない事もあるし、と考えていて、思い出した。明日の事だ。
    そうだ。明日、どうしようか。姉さんがまだあの男の事を気にしてるんだ。
    未だに俺によくその話をして来る。あんまりにも不安そうに言うから、少し前に、もう諦めるように説得してみたけど、まだ無理みたいだった。
    一応、警察に行って身元不明者の確認をしてみるか訊いてみたら、行きたいって言ってた。今度、俺と休みが合う時に行こうって話にはなってるけど、正直気は進まない。あの男がいなくなった時期と、着てた服装とかで姉さんが気付いてしまうと厄介だ。今思えば、いっその事、あの時全部燃やしておけばよかった。
    今更そんな事を後悔しても仕方が無いけど。できるだけ先延ばしにして、姉さんが諦めるのを待つしかないと思う。
    まあ、姉さんが知ってるあの男の情報はほとんどが出鱈目だから。何しろ正確な住所すら知らされてないんだし。万が一、携帯番号やアドレスが手掛かりになって身元が判明したとしても、あの男の嘘が露見するだけだ。そして姉さんが無意味に疑われるだけだろう。
    そしたらまた姉さんが傷付く事になる。
    あの男は、死んでまで姉さんを苦しめる。
    本当に許せない。様子なんて見てないで、もっと早く始末しておくべきだった。
    他の男も最低な奴ばっかりだったけど、一応姉さんに好意を持って近付いて来た奴らだった。
    でもあの男は、最初から姉さんを利用する事しか考えてなかったんだ。自分の都合のいいように振り回すだけ振り回して、骨までしゃぶるつもりで。
    それなのに。姉さんは未だにあの男を信じてる。
    今、俺がこんなに傍に居るのに。
    ああ、もう考えるのをやめよう。明日は俺も休みだけど、疲れてるとか勉強があるからとか言って、思い留まって貰えるように話してみよう。
    それ以外の事は、毎日順調にやっていけてるんだ。あの男の事は、姉さんが忘れてさえくれれば解決する事だと思う。
    それに明日、俺は本当に勉強もしなきゃならないし。選抜試験はどんどん近付いて来るし、国試の対策もある。早く次の段階に進むために必要なんだ。
    姉さんは、そんなに慌てなくていいって言ってくれてるけど。普段の仕事も大変なんだから無理しないで、て。
    俺は特に焦ってるつもりは無いんだけど、そんな風に見えてるんだろうか。姉さんと一緒に居られさえすれば、俺は全然平気なんだけどな。
    でも、そう言って俺の事を気遣ってくれると、随分気持ちが楽になる。
    そりゃあ四六時中一緒に居れる訳じゃないけど、時間が合うと、時々二人で出掛けたりもして。ただ近所のスーパーに買い物に行くだけでも、まるで夫婦にでもなった気分になれて、すごく楽しいし。
    どんなに仕事や勉強が辛くても。嫌な事もみんな忘れられる。
    これからずっとこんな毎日が続いて行くんだと思うと、本当に充実してるって、実感する。



    ただ最近、一つだけ気になる事があった。
    一瞬、視線を感じたんだ。
    二、三日前、外で姉さんと歩いてる時、ほんの一瞬。
    すぐに振り向いて辺りを見ても、それらしい人間は誰も見当たらなかった。
    姉さんは気付いてなかったみたいだけど、俺は確かに視線を感じた。
    もしかして、警察――?
    それとも、まさかあの人が。
    いや、そんなはずは無い。それは有り得ない。
    たぶん気のせいだ。毎日の激務に加えて、休みの日も遅くまで勉強してるから、疲れが溜まってるだけだと思う。
    だから、なんとなくそんな気がしただけで。
    そう言えば昨日の朝、姉さんが、俺の顔色があまり良くないって言ってた。
    姉さんに心配を掛けないように、もっとしっかりしなきゃ。

    やっぱり、俺の中で、まだ何もかもがすっきり片付いた訳じゃないって事なんだと思う。もっと冷静にならないといけない。
    今日、姉さんが帰って来るのは夕方くらいのはずだ。それまで時間はある。
    食事の後片付けをしたら、取り敢えず横になる事にしよう。
    勉強も煩わしい事を考えるのもその後でいい。
    俺は少し、気が逸ってるだけだ。
    今は何も考えずに少し身体を休めよう。
    そうだな。身体だけじゃなくて、心も。





     file #10



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